
美容室・美容サロン経営におけるLTV(Life Time Value)とは?
美容室・美容サロンの集客は、インターネットやスマートフォンからが当たり前の時代になりました。
過去に主流であったフリーペーパーを代表する紙媒体から、徐々にWEBへと移行していることは、皆さんもお気づきの通りです。
集客手法が時代とともに変化している中で、費用対効果やCPA(1人が来店するのにかかるコスト)をしっかりと把握し、より効率的・効果的な店舗経営を目指す美容室・美容サロンも増えてきました。
しかし、、
「かけている費用分の効果って本当に出てる…?」
今回テーマとして取り上げるLTV(Life Time Value)とは、集客を短期的ではなく、長期的に見る際の考え方です。
なんとなくやおそらくといった感覚ではなく、費用対効果についてしっかりと数値で把握し、店舗経営に取り入れていきましょう。
目次[非表示]
LTV(Life Time Value)とは?
LTVとは、「顧客生涯価値」を意味し、「1人の顧客がある店舗で生涯に使用する金額」を指します。
現在の美容室・美容サロンは新規顧客の集客に目が行きがちですが、LTVの考えを踏まえた経営をしていくことで、集客のやり方ががらっと変わります。
例を挙げて考えてみましょう。
美容室Aのオーナーが、集客を目的にチラシを撒こうと考えています。
1万枚のチラシを撒く時ににかかるコストが、10万円でした。
このチラシをきっかけに、客単価5,000円の顧客が10名来店した場合の売上は、5万円となります。
「あれ…?赤字だからやらない方がいいのかな…?」
と思った方も多いのではないでしょうか。
たしかに短期的に考えれば赤字ですが、長期的に考えた場合はどうでしょう。
10人のうち6人は1回のみの来店、2人は3年間(2か月に一度の頻度)の来店、残る2人は5年間(2か月に一度の頻度)の来店だとしたら…
なんと、合計51万円の売上になります!
赤字だと思っていたチラシを撒きの費用対効果は、なんと約5倍!!
このように、LTVの考え方を用いて新規客のリピート率を考慮すると、結果的に成功だったということがわかりますね。
1回限りの結果で損得を判断するのではなく、長い目で見た時はどうなるのか?といった視点を持って結果を判断するようにしましょう。
LTVが注目されるワケ
LTVが注目される背景には、従来の新規顧客獲得より、これからは既存顧客維持を重要視する風潮が強くなってきたためです。
マーケティングでは「1:5の法則」という言葉がありますがご存じでしょうか?
既存顧客維持のコストを1とした場合に、新規顧客獲得をするにはその5倍のコストが発生すると言われています。
また、「5:25の法則」という言葉もあり、顧客離脱割合を5%減らすことができれば、利益が25%向上すると言われています。
これらのことからもわかるように、既存顧客を維持することは、新規顧客を獲得すると同様に非常に重要となります。
既存顧客との関係を長く継続させることによって、全体の売上もさらに拡大できることでしょう。
LTVの算出方法
LTVを算出する際には、一般的に以下の公式を利用します。
LTV=1回の平均単価×平均購買頻度×平均購買期間
例えば、ある美容室に毎回5,000円(1回の平均単価)のサービスを利用する常連客がいたとします。
この常連客が、年間6回(平均購買頻度)を3年(平均購買期間)にわたって来店した場合、5,000円×6×3となり、この常連客のLTVは90,000円となります。
基本的なLTVは上記の公式で求めることが可能ですが、さらに詳細なLTVを求める場合には、維持顧客数・顧客購買粗利額、・客維持費を以下のように算出します。
①維持顧客数=新規顧客数×顧客維持率
②顧客購買粗利額=顧客単価×維持顧客数
③総顧客維持費=1顧客あたりの顧客維持費×顧客数
以上の各数値を事前に計算しておくことで、より正確に費用対効果を見極めることができるようになりますね!
算出した結果を分析する
LTVの計算によって得られた数値。
これらを指標にすることで、今後の集客にどの程度の費用をかければいいかを判断することができるようになります。
既存顧客から得られる売上がわかれば、目標としている売上から見た場合に、どの程度の新規顧客が必要かということも、逆算することで明らかになりますよね。
少しとっつきにくい内容ではありますが、こういった分析をいつでもできるよう、顧客維持率、購買単価、購買頻度のような数値は、常に蓄積させておくことが重要です。
LTVが向上することによるメリット
LTVが向上することによって感じるメリットのひとつに、集客コストの節減があげられるでしょう。
既存顧客維持によって売上を上げることができれば、新規顧客を獲得する分の集客コストを抑えられます。
結果的に、限られたリソースをより効率よく運用することができるようになるため、取り入れないという選択肢はないかもしれません。
また、既存顧客にサービスや商品を継続的に購入してもらうことで、売上の安定化も見込め、既存顧客の分析によって優良顧客の傾向も掴むことができるようになります。
LTVが向上する方法
これまでの説明で、LTVが向上することによるメリットはご理解いただけたと思います。
では、実際にどうやって向上させていけばいいのでしょうか?
LTVを向上させ、利益を拡大するための重要なポイントを、3つご紹介いたします。
セット販売
サービス・商品を販売する場合にLTVを向上させる方法として、まず考えられるのがセット販売です。
別々のサービス・商品をセット販売することにより顧客単価のアップを狙います。
例えば、
・カットに+αで、パーマ・トリートメントを付ける
・縮毛矯正に+αで、自宅で使用するトリートメントを付ける
などなど。
しかし、なんでもかんでもセットにすればいいわけではありません。
顧客が本当に必要だと思うものでなければ、セット販売は成り立ちません。
「このカットにはパーマを合わせた方がより良くなる」
「きれいな縮毛矯正を保つためにはこのトリートメントを使った方が良い」
常に顧客を第一に考え、髪のプロの目線から提案できる親和性の高いセット内容になるよう心がけて設定しましょう。
原価を抑える
当たり前のことですが、商品の販売において価格は最も重要な要素です。
より安価な仕入れ先を探したり、販売までにかかる経費を節減することで原価が抑えられ、最終的に価格に反映できるようにしましょう。
既存顧客へのアフターフォロー
LTVを向上させるにはリピートに繋げるためのアフターフォローは必須といえるでしょう。
アフターフォローせずにリピーターになってもらえるに越したことはないですが、なかなか厳しいのが現状です。
そのため、初回来店時にメルマガの登録や、LINEでの友だち登録をしてもらい、情報を提供できる環境を整えていきましょう。
「美容室運営におけるLTV(Life Time Value)とは?」のまとめ
今回は、美容室運営においてLTVという概念を用い、具体的な事例を交えて解説しました。
集客においては、顧客と長期的な関係を築いていくことが、さまざまなメリットを生むということがご理解いただけたと思います。
さらに、このLTVという概念の素晴らしいところは、顧客に対してのメリットだけでなく、美容室で働く美容師にもメリットがあることです。
リピーターを増やすためには、技術面の強化・接客の質向上・知識のインプットなどが必要であるため、おのずと美容師のスキルアップにも繋がっていきます。
このように顧客を育て、ともに美容師も育っていく環境を創っていくのが、今後の美容室業界を生き残っていくために必要な考え方となっていくでしょう。